視覚障害者と横断歩道で出会ったら

こんにちは しばです。
4月6日土曜日から4月15日月曜日までの10日間は
春の全国交通安全運動期間です。
交通ルールをしっかり守って
正しい交通マナーを実践・習慣づけることと
国民自身で道路交通環境の改善に向けた取り組みを推進して
交通事故防止の徹底を図ることを目的としています。
期間中の4月10日は #交通事故死ゼロを目指す日
になっています。
日頃から当たり前に守りたい交通安全も
こうして全国で意識する期間があると
慣れからくる油断にも気を付けることができますね。

さて、3月のナビ広場ブログは、春の全国交通安全運動にちなみ
横断歩道とナビレクをテーマにして
視覚障害者とマップ作成者の2つの立場からお届けします!

前編となる今回は視覚障害者の私から書いてみますね。

横断歩道のはじまり

日本での横断歩道の始まりは
1920年、なんと大正なんですね。
その頃は路面電車の線路を横切るための
「電車路線横断線」として使われていました。
それが1950年ごろから車の保有数が飛躍的に上がり
車の走る道路を横切るためへと目的が変わり
デザインも、それまでは進行方向への縦線だけだったのが
正方形をジグザグにずらしたようなものへ
そして今のような横線へと変化しました。

法令上、横断歩道は
「道路標識又は道路標示により
歩行者の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分
(道路交通法第2条第4項第1号)」
と定義されていて
今は、間隔0.45 – 0.5mの白色の縞模様を描くようになっています。

あなたの近くにある横断歩道は音が鳴りますか

横断歩道の種類

さて、現代の横断歩道・信号は
交通バリアフリー法の身体障害者への自立支援の考えに基づいて
いろいろな工夫が施されるようになりました。
どんなものがあるか並べてみます。

エスコートゾーン

エスコートゾーンの画像です。歩道の点字ブロックの直線状にあり、渡った後も歩道の点字ブロックにすぐ乗れます

横断歩道の中央にある、突起のある誘導ラインです。
幅はだいたい45から60センチほどで、これがあることで
視覚障害者は横断歩道の進行方向が分かります。
車道に出る危険を減らすことができるんですね。

歩行者支援信号

専用の携帯端末や白杖などに巻かれている反射テープに反応して
現在の所在地と方向、信号の状況を音声アナウンスします。
青になったことも知らせてくれます。

青信号の延長・音声アナウンスを取得する端末には
シグナルエイドエコーカードがあります。

音響式信号機

音響式信号機のタッチ式装置の画像です。タッチ部分には白杖を持った人のアイコンと、音が鳴っていることがわかる音符のイラストが描いてあります。タッチ部分の下にはおまちくださいと表示された液晶パネルがあります。

みなさんもこんな音を聞いたことはありませんか。

「カッコー、カカッコー」
「とおりゃんせ、とおりゃんせ」
「ぴよ、ぴよぴよ」

これらは進む方向の信号が青だとわかる耳印(みみじるし)であり
音に向かって歩く誘導音でもあります。
同じカッコーでもたとえば今いる場所が「カッコー」なら
向かう先は「カカッコー」と微妙に違う音が鳴っています。
この違いから、カカッコーを目指して歩くと渡れる、という仕組みです。

交差点において
カッコー は、幅が広い・交通量が多い主道路(しゅどうろ)
ぴよぴよ は、幅の狭い・交通量が少ない従道路(じゅうどうろ)
に使われています。
※音響式信号は流す音など、地域によって取扱いが異なることもあります

自動とボタンと時々タッチ式

音響式は自動で鳴るものと、手動で鳴らすものとがあります。
手動の場合は、ボタンや装置にタッチしなければいけません。

見えない・見えづらくて困るのはこの「ボタンや装置はどこにあるの?」
そもそも「この信号は音響式なのかわからない」ことなんですね。
こんなときに、“人が考えて作る”ナビレク・バリアフリーマップに
ひと工夫あるととっても助かるんです!

【マップ作成者向け】視覚障害者が嬉しい、横断歩道の気配り

・横断歩道の長さ
3メートルくらいならアナウンスがなくてもいいですが
10メートルとかになると歩くスピードを考える判断材料にもなります。

・中州があるかどうか
長い横断歩道の場合、途中で立ち止まれるかは、結構大事な情報です。
2回に分けて渡れることが分かっていれば、落ち着いて横断できます。

・音響式信号装置の場所
音響式ではないことのアナウンスは要らないですが
音響式で特に手動の場合、ボタンやタッチ式の装置が
どこにあるかアナウンスがあると助かります。

実際の例 東京メトロ西早稲田駅2番出口から東京ヘレンケラー協会本部
「諏訪町の交差点です。2時の方向に進み
信号を渡ります。右手に音響用ボタンがあります」

さらっとした説明ですよね。
これだけで視覚障害者には伝わりますし、助かります。
グーグルストリートビューで歩行者信号の柱の下あたりを
黄色か白の装置があるか注目してみてください。
信号の真下くらいの「音響式」の看板を探すのも手です。

エスコートゾーンがあるかは
ナビレクにアナウンスが必ずしもなくても良い
と思っています。
というのも、エスコートゾーンを使う人は
中央にあることをわかっているので
必要なら説明がなくても中央にいって、あれば使いますし
ナビレクの振動が同じ役割なので、使わなくても歩けます。

あと、もう一つ理由があって
音響式信号で手動の場合
横断歩道の端に行って音響をオンにして中央まで移動するとなると
歩道のフチで動き回ることになり
車道に体や白杖が出て車に轢かれるリスクも
待っている人にぶつかるリスクもあります。

エスコートゾーンと音響式信号なら
音響式信号の情報を優先してアナウンスいただけると助かります。


横断歩道の特別なパターンを説明している例

以下は、駅前のバスロータリーにある、信号のない横断歩道の例です。
「信号はなく、自由に横断できますが、
路線バスを通す時だけ、係員が制止するので、
指示に従ってください。」

見えていればすぐに状況判断できることも
見えなければ何が起きていて、どう対応すればいいか、すぐにはわからないです。
こうした気配りも嬉しいですね。
ちなみに、この説明の前にも文章があって全体は少し長いですが
出発地点で立ち止まって聞いている場面なので問題ないです。
これが経路の途中にあるなら、直前か直後に
付録説明にして入れると歩きやすいすっきりとしたマップになります。
参考ガイド: 吉祥寺駅北口から、ヨドバシカメラ吉祥寺店、正面いりぐちまで


歩いているときは簡潔に、溢れた情報は付録説明に

青いポイントと赤いマークのテキストは
「再生モード」での予習時と
「案内モード」で歩いているときに音声読み上げされます。
長い説明は視覚障害者が、車や自転車の音を拾えなくなり危ないです。
ポイント、マークは歩くときに必要な情報に絞って
溢れてしまった説明したい部分は付録説明にしてください。
付録説明は視覚障害者が予習する「再生モード」でしか読み上げません。
付録説明はマップの最初と最後に限らず、途中に入れても大丈夫です。
ぜひ、活用してみてくださいね。

視覚障害者と横断歩道で出会ったらこんな声かけを!


信号が青になっても動かない人
もしかして、白杖を持っていませんか。
そんなとき、こう声をかけてみてください。

「白杖の方、こんにちは。
正面の信号が青になりました。一緒に渡りましょうか」

これは、私がまだ弱視の程度が軽いとき
ほかの視覚障害者に実際にかけていた言葉です。
まず、“あなたに話しかけています”と挨拶してから
視覚障害者の体の向きに合わせて
・どの方向の信号が青になったか
・手伝いがいるかどうか
をセットで聞いています。

お手伝いを求められたら
見えるあなたの、腕もしくは肩を視覚障害者に掴んでもらってください。

NG誘導

■視覚障害者の腕、白杖を掴む
■視覚障害者の背中を押して前を歩かせる
 狭いところは「狭いので私の後ろをついてきてください」
 と言って一列になったことを確認してから歩くと安全です。
■声掛けもなく無言で誘導する
声をかけてもらえないと、どこへ連れていかれるのかとただただ、恐怖です。
緊急の危険回避でも「危ない」と言ってもらえるのがいいですが
命あっての物なので無言になっても、その後「車が来ていた」など説明ください。
■視覚障害者の希望を聞かないこと
例えば、私はエスカレーターが嫌いです。
動くステップに乗るのが怖いので、階段の方が安全に移動できます。
でも、むしろエスカレーターがいい、階段を避けたい方もいます。
本やネットで勉強した視覚障害者はこういうもの、は一例にして
目の前にいる本人の希望を聞いてくださいね。

①どんな横断歩道かを知る
ナビレクの再生モードを使って経路の予習をする
どのタイミングで横断歩道があるか
信号があるか、音響信号があるか
長いか、中洲があるか、色々な情報が掴めます。
それらの情報を頭にぼんやりとでも入れておけば
「ここらへんで横断歩道があったな。慎重に歩こう」
「大きな交差点だから無理しないでおこう」
「右手に音響用信号の装置があるんだったな」
と安全に渡るために余裕をもって対応できます。

②ナビレクの振動で車道に出ないようにする
ナビレクには進む方向に振動する機能があり
これが、さきほど紹介したエスコートゾーンの役割を果たしてくれます。
振動させ続けていると、横断歩道をある程度真っすぐ進めるので
車道に出てしまうこともなく、より安全に渡れます。

ワンポイント
振動するのは、横断歩道や曲がり角など注意するところに
マークと呼ばれるピンが置いてあるからです。
アプリをダウンロードしたとき「次のマーク方向」=進む方向
に振動するように設定されていますが、これ、変えることができます。
ほかには、前後の振動、北の方向、方向を通知しない=振動しない、があります。
ここでは「次のマーク方向」へ設定していることを想定して書いています。
自分のナビレクは違う動きをしているな?と思った方は
ナビレクを開き、指1本で右にフリックして「設定」を選択。
指1本の右フリックで「振動を通知する方向」を選択してから
どこにチェックが入っているか確認してみてくださいね。

音響式信号機にしてほしいときは意見を出してみよう

普通の信号機を音響式にしてほしいとき
リクエストができるのをご存じですか。

警視庁サイトには
交通信号機に関する意見・要望の窓口(信号機BOX)
といったものがあり
フォームの区分選択から
3 音の出る信号機をつけてほしい
を選択して意見を出すことができます。
URLはこちら https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/anket/traffic_signal.html

原則、回答が来ないフォームなので
意見を出すときは信号機を特定できるように
信号機番号や名前、信号のある住所があるといいです。
信号機番号は数字と数字がハイフンでつながっているもので
信号機の近くにあるややグレーの箱に書いてあります。
名前は、車側の信号機にある交差点名です。
住所は自宅近くなら自宅住所を書いておいて
現場状況を書く欄に「●●を曲がったところ」
「●●バス停の近く」と補足すると良いです。

現場状況の欄には、なぜ音を出してほしいかを書きます。
最低限、以下の情報は必要になります。
・自分、家族に視覚障害がある
・通勤や生活で週に●回通る必要がある

私も数回意見を出したことがあります。
あるときは役所を通じて警察の担当の方と直接お話ししました。
あるときは現場確認に来ていただき、状況を知ってもらうことができました。
原則回答はしないことになっているので
絶対ではありませんが、声は届いていると感じています。

そして、今年に入って嬉しいニュースが!
意見を出していたバス停近くの信号が、音響式信号になることが決まりました!
このおかげで、一人でバスを安全に利用できるようになり、行動範囲が広がります。

都内や他都道府県のことも意見をだせますので
あなたの生活に密着する信号機について、声を届けてみませんか。

こぼれ話

こぼれ話① 横断歩道は、大変。
前に出した白杖がほかの人の足をひっかけてしまったり
勢いよく人が、キャリーケースが突っ込んできたり
歩きスマホの人が視覚障害者に気が付かずに正面衝突してきたりします。

対策として、私は、渡り始める前から渡っている間も
白杖を地面につついて音を出して、見えないことを知らせています。
音を出しているとみてもらえるので
横断歩道で立ち往生してしまった車にぶつかりそうなときにも助けてくれます。
階段でも、降り始める最初の段で音を出して気づいてもらいます。

意外と後ろからじゃ白杖、見えないんですよね。
あるときは、始発駅のホームで並んでいて
人が降り終わるのを音で気にしていると
後ろからさっと行かれて、その人が私を振り返って白杖に気が付き
「あ、ごめんなさい」と言われたことがあります。
またある日は、前後にしばらく人のいない歩道で
家族の腕につかまって歩いているとき
後ろからちりん、ちりんと自転車が。
よけて通しましたがやはり、振り返って
白杖に気が付き「あ、ごめんなさい」と。

正面にいる人でも胸より上に視線があるので
腰下にあって棒状の白杖は気が付かれにくいです。
見た目でわかりそうでわからないのが
視覚障害者なんだなと感じているので
音を出して気づいてもらう方法を取っています。


こぼれ話② 音響式信号の夜間停止
歩行者信号と駐車場の空マークを見間違えて轢かれそうになり
安全のため音響信号ボタンを利用し始めたころ
いつまでたっても青にならないことがありました。
その日は仕事で帰りが21時を過ぎていて
すでに住宅に近い音響式信号の音がオフになっていたのです。
そんなことも知らなかった私は「聞き逃したかな」と思うだけで
タイミングを計って渡っていました。
当時は夜盲と視力低下はあったものの
日中は見える人と同様に動けていたので
勤務時間を調整することも合理的配慮も求めませんでした。
視覚障害者としての就職活動は
「音響式信号が使える時間に行って帰ってこられる」
が一つの条件でしたね。


こぼれ話③ バリアフリーじゃない音がなる信号
「信号が青になりました。左右の安全を確かめてから渡りましょう」
信号が青になる度にそこそこ大きい音量で響く女性のアナウンス。
これ、どの進行方向にも同じ声で流れるんです。
もともと音響式信号、というわけではなさそうですし
荒い運転が多くて危なっかしい交差点なので
信号の色より注意喚起が優先になっても、しょうがないなとも思います。
それでも、せっかくしていただけるなら
進行方向によって声を変えてもらえたら
視覚障害者にも便利なアナウンスになるのにな、とこぼしてみます。


さて、横断歩道をテーマに前編をお届けしました。
いかがでしたか。
視覚障害者への質問や視覚障害者としてこんな道案内が嬉しいなど
コメントやお問い合わせからお気軽にメッセージくださいね。

それでは、次回の更新をお楽しみに!

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