【障害受容とテクノロジー】ナビレクが「道に迷う」不安を拭ってくれた

こんにちは しばです。

最近は白杖を出したり、肩を貸していただいたり
サポートを求めたりと、視覚障害者としての自分にも、やっと慣れてきました。
今回は、私の障害受容からナビレクに出会うまでを話そうと思います。

「障害受容」という言葉をご存じですか

大きくは、障害や病気を患ったときに
その状態に置かれた自分自身の状況を受け入れることを言うようです。

唐突に「いずれ失明する」と言われた10代前半の私は
気持ちをどう整理していいかわからず、遮光眼鏡も目立つから嫌だと避け
気の置けない友達にも障害者手帳を見られたくありませんでした。
これも、当時は障害受容ができていなかった、と言葉にできたことで
向き合うことを避け続けた自分の気持ちを肯定して、前に進める気がしました。

しばの障害受容のきっかけ

拡大なしで文字を読めていたころ
仕事の引き継ぎメモにあった、ボールペンの赤い文字が見えていなくてミスをしたことが
視覚障害者としての自分と向き合う最大のきっかけでした。
その少し前には、リビングで物を拾おうとしゃがんだ時に
椅子の背もたれに思いっっっっっきり眉間をぶつけて、でっかいたんこぶを作りました。
ぶつかって初めて椅子があることに気がついて驚きました。
そばにいた家族からしても「何してるの」と思わず言ってしまうくらい目の前でした。
経過観察の数値的には、ほぼ変わらないのですが
日常生活で自覚するほどの支障が出始めたのがこの頃です。
晴眼者とは違う景色の中を生きていると受け入れざるを得ませんでした。
それから、途方に暮れる間もなく、家族が見つけてきた視覚障害者向けの職能開発訓練を始めました。

テクノロジーと付き合い、成功体験が「働く」自信につながった


視覚障害者が使うテクノロジーといえば、拡大読書器しか知らず
拡大して見やすいわけでもない私は「必要ない」と言い
他の可能性を調べようともしていませんでした。
なので、訓練で初めてスクリーンリーダーの存在を知ったときは
とてもワクワクしたのを覚えています。

スクリーンリーダーとは
キーボードの操作だけで画面の項目を移動して、その項目を読み上げてくれる画面読み上げソフトです。
画面を見なくてもホームページを読んだり、メールの送受信もできてしまいます。
訓練が進むにつれ、仕事にも使えるワードやエクセルも編集できるようになると
自信を失っていた就職に対しても「まだ働ける」と意欲が湧いてきたのです。
私にとって働くことは自分を保つために絶対に必要な要素です。
そこに希望の光を差してくれたスクリーンリーダー
それを教えてくれる訓練所、見つけてくれた家族には感謝してもしきれません。

情報を得られる場所

テレビ局の音声ガイドのモニター募集についてや給付制度の利用について
白杖についてなど、訓練所は多岐にわたる情報交換の場にもなりました。
私の音声読書デビューは、ここで教えてもらったLINEアカウントの「文字起こしばりぐっどくん」です。
これは、カメラで撮影してトークに送ると、文字起こしをしてくれるので
それをボイスオーバーで読ませていました。
実はボイスオーバーを使うようになったのも訓練を始めてから。
文字を一所懸命見ることなく、読み上げてくれるなんてとっても便利!と、当時はかなり感動したものです。

また、暗所視支援眼鏡を体験する機会もありました。
真っ暗な部屋でも人のシルエットや机、自分の手を見れるほど明るく映してくれていました。
暗いところが見える、というのは人生初体験でそれはもう、開発してくださりありがとうございます!
とはしゃいでいた記憶があります。思い出すと恥ずかしいです。
冬の間の通勤や外出の制限が緩和され、危険を少しでも自分で避けられるようになるなら使いたいと思っています。
私の住んでいる自治体では支援対象への陳述書が出たきり、採用されていないので
購入には手が出ませんが、今の見え方で夜道の使用感覚を試したいところです。

訓練に通っていなければ、自分だけでこれらの情報にたどり着けたか分かりません。

訓練で使ったスクリーンリーダー
PC トーカー(高知システム開発)
ジョーズ(日本語版開発 有限会社エクストラ)

そのほか、しばがかじったことのあるもの
NVDA(NV アクセス 無料のオープンソース)
ナレーター(ウィンドウズに標準搭載されている読み上げ機能)

就労移行支援制度
私が訓練を受ける時に使った
職能開発や就労についてのサポートを2年間受けられる制度です。
同時に失業保険の受給もできたので生活を維持しつつ、次の就職への準備を進めることができました。
訓練中として失業認定に必要な活動実績を、面談でクリアできたのも心理的な負担軽減になりました。
ハローワークが指定した訓練ではないので、失業認定日の変更ができなくて
月一で訓練を休むか遅刻せざるを得なかったのは悔しかったですが。

歩行ナビアプリ「ナビレク」が「道に迷う」不安を拭ってくれた

仕事をする上で、もう一つ大きな不安要素に「一人歩き」がありました。
虫食いに見えない部分が出てきてから、体の向きを変えると
今いる場所と向かう方向が瞬間わからなくなるため
よほど慣れた道か構造に当たりがつけられなければ、道一本迷うことは日常茶飯事です。
道に迷って夕方にでもなったらと夜盲ゆえの不安もありました。
この不安を拭ってくれたのが歩行ナビアプリ「ナビレク」です。

ナビレクを使いたいと思ったポイント

・視覚障害者向けの、視覚に頼らない道案内説明であること
「駅を背に右へ」
は、体の向きを指定してくれるので、進んでいく方向がわかりやすいです。
「信号のない横断歩道を渡ります」
は、信号機が視界に入っていないだけかもしれないと探して
多分、無いんだなと恐る恐る渡っている私にとっては助かる情報です。
基本は自分の耳で車の動きを確認しますが、静かな車が多いので
意図せず飛び出しにならないよう、ナビレクからの情報を参考にしつつ気をつけて歩いています。
ダラダラと説明が長くなく、簡潔に説明してくれるのも聞き取りやすくていいですね。

・GPSを使い、現地で案内を受けられること
曲がりが多いルートなどは特にですが、私は経路全体を覚えてはいられません。
現地でスマホを見る必要もなく、適切なタイミングで案内を受けられるのは助かります。

・定期的に置かれているポイントの音で、ルート上にいる確認ができること
説明がなくても、ポイントと呼ばれる印が置いてあれば、通過時に音が鳴ります。
その音が鳴るということはルート上にいることの確認になり
ルートを外れると、しばらく歩いても無音なので比較的早く気がつき修正できます。

・マークへスマホを向けたときの振動で、向かう方向がわかること
設定次第なのですが、ナビレクは次のマークへスマホを向けると振動します。
以前、案内を聞き間違えて、左に行くところを右へ行ったとき
無振動、無音になったのですぐに気がつけました。
引き返して案内を再度拾い、振動の方向を確認して無事にルート上に戻ることができました。
周りに頼れるお店があるかもわからない、初めての道でしたから
間違っても自分で解決できたことが成功体験になりました。

・少し先の行動まで教えてくれる
グーグルマップを使っていた頃は、どのくらい歩いたらどっちへ曲がるかなど
少し先の道順を知るのに頻繁に立ち止まっては確認していましたが
ナビレクは少し先の情報を伝えてくれるので、その分安全に気を配って歩けるようになりました。

シンプルだけど重要なところはきっちり抑えてあって歩きやすい
何より、迷っても音や振動を頼りに自分で解決できるというのが大きかったです。
先日、ナビレクを使わなかったらあっけなく迷子になったので、その時どうしたかはまたお話ししますね。

おわりに

視覚障害者としての私がテクノロジーと付き合い、ナビレクに出会うまでのお話でした。
それではこの辺で失礼します。

ナビレクお散歩会「川越お散歩会 城下町・目の神様 巡り」

日時:2023年3月21日(火・祝)
参加費:無料
集合:
西武新宿線本川越駅改札13時
東武東上線川越市駅12時45分
解散:
西武新宿線本川越駅改札17時

ナビレクお散歩会は、音声ガイド歩行ナビアプリ「ナビレク」を使って視覚障害者の新しい歩行手段を体験しながらお散歩し、交流を深める会です。
募集人数 視覚障害の方:10名 目の見える方:15名 (視覚障害の方とペアで歩きます)

コメントを残す